映画やニュースでも、色々な英語を聞く機会が増えてきましたね。
ある地域の人の話す英語がある程度聞き取れるようになった後でも、「この英語は聞き取りにくいな…」という場合は、アクセントが違うため、慣れが必要だということは、結構あるものです。
普段から、自分が英語・米語どちらよりの英語により親しんでいるか、ちょっとしたバロメーターにもなりますね。
今回は、イギリス英語とアメリカ英語の発音・スペリングにフォーカスして違いをご紹介してまいります。
⑴ 発音:Pronunciation
それでは、さっそく発音の違いから見ていきましょう。
今回、母音の”a”, “i”, “o”、子音の”r”, “t”を取り上げています。これらの5つの違いを注意深く聞いていると、相手の方の話す英語が、イギリス英語系統か、アメリカ英語系統か、識別できるようになります。
アクセントの傾向が大体掴めるようになれば、聞き取りに慣れるスピードも上がりますし、スピーキングについても、自分が発音しやすい英語の特徴を知ることができます。
① a
これについては、イギリスでも地方差があり、(イングランドの北の方などは、むしろ米語と似ていて、)すべての方言に当てはまるわけではありませんが、南東部の方では、英語での”a”の音は、口を縦に開けた「ア」の音で、少し長めに発音されます。
例えば、”tomato”, “potato”, “bath”, ”glass”, “laugh”などの米語では/æ/の音のものが、英語では/ɑ:/という発音になるものの代表格です。
また、”apple”のように、発音記号上は同じ/æ/で表現される音であっても、英語の方は、米語ほど口を横に開けて「エ」の要素を強調しません。「エア」よりも、日本語の「ア」に近いくらいです。
② i
次の単語を比較してみましょう。
“globalisation”(英)・“globalization”(米)
“idealisation”(英)・”idealization”(米)
“modernisation”(英)・”modernization” (米)
“-ise /-ize” は、「〜化する」という意味を付け加える接尾語で、スペリングの違いもありますが、”i”の音の読みについても、「アイ」(英)・「イ」(米)と異なって発音されます。
一番下の語を例をとってみると、それぞれ、”modernisation”「モダナイゼイション」(英)・”modernization”「モダニゼイション」(米)のような発音となります。
③ o
こちらは、”oa”「オウ」という二重母音ですが、英語ではわずかに「ア」の要素が入ります。例えば、“go”は、米語では「ゴウ」に聞こえますが、英語では「ガウ」のような感じになるのです。
”oa”, “ow”, “oe”を含む語は、同じ”o”の音を持っています。
■ “soap” /səʊp/(英)・ /soʊp/(米)
■ “row” /rəʊ/(英)・ /roʊ/(米)
■ “toe” /təʊ/(英)・ /toʊ/(米)
米語では、口を丸めて「オウ」となりますが、英語ではそれよりは、口を軽くリラックスさせた「アを含んだオ+ウ」をイメージしてみて下さい。
④ t
イギリス英語・アメリカ英語での顕著な違いの一つとして、”t”の発音があげられます。
米語での”t”は、語の途中にある時に、”r”や”d”のような音として発音されます。一方、英語では、”t”の音は声門閉鎖音に変わり、短く鋭い音になります。
例えば、”water”は、米語では「ワラ」に似た音に聞こえますが、英語では、そのまま「ウォーター」となります。
さらに、“often”は、アメリカ英語では”t”の音は落として、「オーフン」のように発音されますが、イギリスでは「オフトゥン」のような発音で話すされることがほとんどです。
読んでいるときだけでは気づきにくいですが、実は、このように同じスペリング・同じ意味であっても、英語と米語で、ストレスの位置が違うために発音が異なる語、というのは、たくさん存在しています。
⑤ r
米語での“r”は、子音の前にくるものを特に強く発音する、「巻き舌」の音ですね。
英語では、”r”の音は、単語の先頭にくる場合を除いて、発音されません。(イギリス南西部でも、一部、これに似た発音をする地域はありますが…)
例えば、”r”の音が、”work”や”bird”など語の真ん中にくる時や、”more”, “care”, “hair”など語の最後にくる場合、口をあまり開けない、弱い曖昧な母音/ə/として発音されます。
/-er/, /-ir/, /-ur/・ /-ar/・ /or/で終わる単語を聞いただけでも、たいていの場合は、英語か米語かは判断できるほどです。
’poor’[「ポー」(英)・「プア」(米)]、’sure’[「ショーor シャーに近いことも」(英)・「シュア」(米)]などは、まったく別の単語のように聞こえるものもあります。
⑵ スペリング:Spelling
以下では、スペリングの違いを見ていきます。
英語では、発音しない音も加えた、長くて複雑なスペリングを好みます。一方で、米語では、大体スペリングは発音される音に合わせて、短くする傾向があります。
(✴︎英語を先に、米語を後にご紹介しています。)
■ -ise/ -ize
→先ほど、上記の”i”の発音の違いのところで出てきた”s”と”z”ですね。他にも、”realise”「しっかりと気づく」や”civilise”「文明化する」、”organise”など、頻繁に出てきます。
■ -lyse/lyze
→こちらも上と同じく、”analyse”「分析する」(英)・”analyze”(米)のようになります。
■-lかーllか?
→こちらは、少し煩雑です。
・travel・・・travelled / traveled、travelling /traveling とイギリスの方は”l”を重ねます。
・cancel・・・過去形では、travelと同型の変化。イギリスでは”l”を重ねて、アメリカではそのままに”-ed”をつける。
・fulfil / fulfill・・・過去形は同じく、”-ll”を重ねた”fulfilled”になるのですが、現在形が異なっています。
・enrol /enroll・・・過去形は同じく、”-ll”を重ねた”enrolled”。ただし、こちらの名詞形は、”enrolment”(英)/ “enrollment” (米)となります。
・”jewellery”/ “jewelry”
■ -our/ -orの違い
→”colour” / ”color”、“favourite” / ”favorite”、”honor”/ “honour”など。
■-ogue/ogの違い
→”catalogue” / “catalog”、“prologue”/ “prolog”、”dialogue”/ “dialog”など。
■que / ckの違い
→”cheque”/ “check”「小切手」。
■eの消去の有無
→”ageing” / “aging”、”likeable”, “likable”、”judgement”/ “judgment”「裁判」など。イギリスは、”e”を消しませんが、アメリカは短くします。
■ -re/er
→”centre”/ “center”、”theatre”/ “theater”など。イギリスでは、フォニックス通りではありません。
■ -ce/se
→”licence”/ “license”、”defence”/ “defense”など。ただし、イギリスでは”licence”については、名詞にはこちらの綴り、動詞形には”license”を使って品詞を区別します。
■ -ae
→発音の仕方は、「イー」と伸ばす音です。
・”paediatrician”/ “pediatrician”「小児科医」 /ˌpiː.di.əˈtrɪʃ.ən/
・”encyclopaedia” / encyclopedia 「百科事典」
次の発音では、「エ」となります。
・”aesthetic” / “esthetic” 「美学」 /esˈθet.ɪk/
■-oe
→”amoeba”/ “ameba”「アミーバ」、”foetus”/ “fetus”「胎児の」/ˈfiː.təs/など。あまり見かけませんが、こちらも発音は、主に「イー」の音。
■その他
→”tyre”/ “tire”「車のタイア」、”grey”/ “gray”「灰色」、”snowplough”/ “snowplow”「スノウプラウ; 雪かき機」など。
*****
いかがでしたか?
発音やスペリングの違いについての知識をある程度持っていると、リーディングやリスニングの時に戸惑う場面がなくなり、内容の理解がより簡単になりますね。
リスニングでは、この他、ストレス《強勢=強く読む音節》の位置に意識を向けて聞いてみると、その中からも多くの発見があります。
この記事が、折々に英米の違いを楽しみながら、英語に慣れていただくお役に立てますように!!